531 LC直列過渡特性 参考実験
ここでは$ LC直列回路の過渡特性を観測する実験を紹介する.
☆☆ 注意 ☆☆
この実験を参考にするなら,なんのためにやるのかを明確に.
この章で提示されている実験をやっただけで,本テーマがクリアできるわけではない.
https://gyazo.com/c1a2f8eba8f058f906425ca96581fd3f
図531.1直列共振回路の過渡応答測定回路(再掲)
■概要:
settings.icon$ LCR直列共振回路にパルス波を印加し,急峻な立ち上がり/立ち下がりにおける過渡応答曲線を観測する.
settings.icon 時定数$ \tauを求める.
◎測定条件:
入力信号:$ 1.0kHz,1.0V_{p-p},矩形波(方形波)
※$ v_1=1.0V_{p-p}になるように信号発生器の出力電圧(AMP)を調整
⇒ 計測の都合としては,共振現象の振幅値がわかりやすいように調整してよい
※本実験で$ LC回路f特で使った$ v_2/v_1比は使わないので,そういう意味では$ v_1=1Vに深い意味はない.ただし,$ v_1の値が変化すれば当然,共振現象の振幅値は比例変化する.したがって共振現象が見やすい値に調整するのがよいかもしれない.しかし,逓減している振動波を「見やすくする」のはどこを基準にするかによって変わるので,あまり深く考える必要はないといえる.
回路素子:
$ Zマッチング抵抗:直列39$ \Omegaと並列10$ \Omega
コンデンサ$ C:$ 1000pF
インダクタンス$ L:未知
※振動の角速度$ \omegaより求める.アルミシャシに参考値が記載
◎測定/算出すべき値:
(1)出力電圧$ v_2の立上り/立下がり部分での振動現象を観測.
※観測はGNDから上下どちらか半分でOK
(2)振動波の$ \tau を見つける
※測定値は相対電位.→ グラフ軸線は見やすく設定
$ V_a,V_b,V_cを測定 ⇒ 最大振幅$ v_\alphaを算出
⇒振動波の各ピークを測定 ⇒ プロット ⇒ ピークの包絡線を描く
⇒$ v_\alphaの$ 36.79\%に達する時刻$ =\tauを見つける
⇒5~10周期分の頂点の時間幅$ aを測定
⇒$ aから平均周期$ Tを算出 ⇒$ Tから角周波数$ \omega_0を算出
⇒$ \omega_0からコイルの$ Lを算出
■準備:
準備(1) オシロスコープの校正をする.
準備(2) アルミケースに図531.1の回路を組み立てる.
シャシ上面の$ R端子はジャンパ線で直結する.
シャシ側面の$ Z整合抵抗を忘れない(直列:$ 39\Omega,並列:$ 10\Omega).
準備(3) 信号発生器の出力を回路の入力端子に接続する.
準備(4) 入力直後の電圧$ v_1と,コンデンサの両端に発生する電圧$ v_2をオシロスコープにて観測する.
※この時,オシロスコープの入力インピーダンスが並列に入る.これが共振回路の振る舞いに影響するのかどうかを,考えてみよう.
※オシロスコープの入力$ Z=約1M\Omega,入力容量$ =20pF
https://gyazo.com/f24b86ccff2be6ea0e1ce0d406fbed4a
図531.2 過渡現象の包絡線と角周波数(再掲)
【実習課題531】($ LCR過渡応答の計測)
方形波の出力は立ち上り/立ち下がりにおいて振動するため,概ね図531.2のようになる.
この振動の様子つまり時間応答波形を観察する.
ここでは波形の上側半分のデータを取り,正方眼紙にグラフとして描くすることにする(図B.7に例を示す).
※上半分だけでよいのはほぼ上下対象のため
手順(1) 振幅測定を上側半分ですませるために振幅中央値を定めたい.
まず共振始めのピーク3つ(図532.2の$ A,B,C)を測定し,それぞれの電位と時間を$ A(V_a,0),B(V_b,T/2),C(V_c,T)とする($ Tは振動周期).
手順(2)$ V_a,$ V_cの平均値をとり,その結果と$ V_bとの平均値を算出する(下式).
この電位を振幅中央値$ V_O(相対0$ V)とする.
$ V_O = \frac{\frac{V_a+V_c}{2}+V_b}{2} = (V_a + 2V_b + 2V_c)/4
手順(3) さらに下式にて$ V_aから振幅中央値の電位差を振幅最大値$ V_\alphaとする.
$ V_{\alpha} = V_a-V_O = (3V_a - 2V_b - V_c)/4
手順(4) 振幅最大値から順に振動が終わって立ち下がり始めるまで,上側の振動ピーク値を相対値で計測する.
※オシロのカーソル機能を活用
手順(5 )各ピーク値をグラフにプロットし,滑らかにれをなぞって包絡線(envelope)を描く.
※exponential(指数関数的)な緩やかな曲線になる
★描くのはピーク値の包絡線のみ.振動そのものは不要.
手順(6) 包絡線から$ V_\beta = 0.367V_\alphaとなる時間を読み取り,それをこの回路の時定数:$ \tau_{(t)}とする(635.4式参照)(635 直列共振回路の過渡応答理論). ※注意(a):$ \tau_{(t)}はオシロで直計測可能か?
※注意(b):描いたグラフから正確読み取るには何を工夫する?
手順(7) この振動の角周波数$ \omega_0を求めたい.
周期$ Tは手順(1)でのC点の時刻である.
しかし1箇所の測定では測定誤差が出やすい.
より精度を上げるために,図B.7の$ aように$ n個(5~10程度)のピーク間の時間幅$ aを求め,それを平均して周期$ Tを算出し,そこから$ \omega_0を求める.
$ 周期\;T = \frac{a}{n}\; [秒],角周波数\; \omega_0 = \frac{2\pi }{T}\; [rad/秒]
https://gyazo.com/5f3cb1a3578236125a41028b11fed053
図531.3 本実験でのグラフ例
【検討課題531】(過渡特性の確認)
(A) 上の手順で求めた角周波数$ \omega_0と,$ RC回路過渡応答実験で求めた$ C_{(a)}を使って,コイルのインダクタンス$ L_{(t)}を算出する.
もし$ C_{(a)}がなければ$ C=1000pFとする
(B) この$ Lと上記手順で得た$ \tau_{(t)}を用いてコイルの交流抵抗$ r'を算出する.
(C) 同じく時定数$ \tau_{(t)},角周波数$ \omega_0を用いて$ Q_0値を求め,$ Q_{0(t)}とする.
(D) 手順(7)で求めた周期Tよりこの振動の周波数を算出し,$ f_{0(t)}とする.
※この値は別の実験で参照する
以上.
2024/4/8